プリズン・ストーリーズ
「ケインとアベル」でベストセラー作家となったジェフリー・アーチャーはサッチャー政権の広告塔とも言われていたが、とある事件をきっかけに投獄される身となった。
その時の体験を元に書いた短編の数々である。
相手が作家であると分ると、自分の人生を語りたくなるのはよくある話だ。犯罪者という日常を逸脱した人間であるなら、尚更語りたい人間も多いらしい。己の”特別な体験”について。勿論そのままでは小説にはなりえない。それをどう料理するかが作家としてのアーチャーの腕の見せ所となってくる。
ここに登場する犯罪者、昨日までは一般市民である場合が多い。真面目に生きていた人生が、ある日、ある事をきっかけに狂ってしまう。そして彼等は牢獄に送られる。もしも作家と出会わねば、彼らの人生は世間と隔離された世界で風化するのみだったであろう。
人生は何が起きるか分らないが、人は生きる事をやめてしまうよりは、生きる事への知恵を働かそうとする方が多い。社会と個人の思惑は必ずしも一致しない。裁判も警察もどこに基準を置くかで公平の意味が異なってくる。無罪も有罪に変貌する。
シニカルなユーモアの中に漂うのは、彼らへの何処か暖かい視線である。それは自身にも起きてしまった出来事であるからだろう。いや、読者にそれを感じさせるのも、作家の手腕という所か。
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