トルーマン・カポーティ(上)(下)
天才作家の栄光と悲劇・・・そう簡単に要約して良い人生なら、トルーマンは幸福であったと思う。そんな単純な人生を送る人間など、誰一人としていない。
この本は、オーラル・バイオグラフイという手法が取られている。彼を良く知る(或いは一面のみを知る)人々の証言の羅列の中に、だまし絵の如く彼の人物像が浮かびあがって来る仕組みになっている。
人々の話には、食い違いがある。記憶違いや思い込みのあろうし、あえて隠されたもの、誇張されたり、アレンジされたものもあるだろう。だが、素材の持ち味が強烈であれば、そのすべてを消し去って料理をする事は不可能なのだ。どんな名シェフであろうとも。
「彼はこうだった」「彼はああだった」と決め付ける人々。少なくとも、トルーマン自身よりも世界に名を知られた人はほとんどいない。海の中を泳ぐ魚を陸の上から見ただけで、どんな思いで魚が泳いでいたかなど、理解出来るのだろうか。
或る時代が存在し、空気がそこにあり、それを呼吸した人々がいた。
トルーマンと通して、我々は時代劇の観客となるのだ。爛熟と退廃と腐敗と堕落の中で、品格も伝統も誇りも変質していった時代の。そして今も、世界は腐り続けているという現実の時間が、自分の傍らを流れている事を感じながら。
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